花びら / ダランディーガとの日常






 ターナは今日の装備の手入れを終えて、星空を見上げた。

「んー、どうしたの、ターナ」

 ヒューム族の女性がターナに声を掛けた。

 彼女の名前はアンバー。ターナが毎日目立たない所で装備を丁寧に磨いている所をアンバ

ーが見つけてから、一緒に経験上げをしたいと彼女に言われて、一緒に経験を積んでいる

友人だ。

 その声にターナはアンバーを見て笑う。

「あ、彼氏を思い出していたかぁ」

「そう、今何をしているのかなぁと思って」

 ターナとパーティを組んでいる面々が、ターナ達の横でダランディーガが所属する集団

の噂話をしていた。

 まあ、平たく言うとあまりいい評判ではない。

 話を聞いていると、どうやら彼らは何度もダランディーガ達に獲物を取られているらし

いから、悪く言うのは当然か。

 特にダランディーガは“絶対何かある。どこかで何かの細工をしているのではないか”

とまで言われていた。

 でもそう言う人に限って…ターナから見れば武器や防具の手入れがまずいので、話半分

で聞き流す事にしている。

 悪く言う人の中には手入れの行き届いた人もいたが、その人はどこかでダランディーガ

を認めていたから、その人の話はそれなりに聞く。

 お互いがお互いの“特別な人”となれば、これ位してもいいだろうと思うのだ。

 だからターナはそんなダランディーガの話が聞こえても耳に残さずに空気に捨てる。

「そろそろ教えてくれたっていいじゃない。水臭いね」

 アンバーはターナに向かって唇を尖らせた。ターナはそれを見てうつむいて笑う。

「アンバーに紹介する前にプイッと出て行っちゃうからね。それにね、人前で2人揃って

何かする事を嫌うんだ。よっぽどじゃない限りはパーティを組んで何かもしないしさ」

「変わっているなぁ。こう、皆の前でベタベタしたいとか思わないの?」

 アンバーの言葉にターナは苦笑した。手入れの道具を鞄の中に入れて仕舞い込むと、1つ

ため息をつく。

「とにかく、人前でそうやってするのが嫌いなんだってさ。くっつけるのが競売所前の人

混みの中だけなんだから」

 それでもターナは無言で自分の背中に立つダランディーガを快く思っている。

 ダランディーはターナの後ろに立ち、後ろからの人混みにターナが押しつぶされないよ

うにある程度の空間を空けてくれているからだ。それが彼なりの優しさで、気遣いだった。

 彼と一緒に競売所に居る時は体がとても楽だ。

 そして本当にたまに、ターナの顎をくすぐる。ターナが見上げるとダランディーガはそ

れをやめてしまうので、見上げずにそのくすぐりを受ける。

 ダランディーガが誰かに呼ばれると、そうやって触っていなくてもスイッと首筋を撫で

てから無言でその場を離れてその人物の所へと行く。

 話が終わったらこちらを見て、ターナがいたらまたターナの後ろに、いなかったらどち

らかの宿に顔を出す。

 街中でくっつくといえばそういった位だ。

 彼氏ってどういうものなのかなぁと思っているターナにとって、ダランディーガが標準

になりそうだが、アンバーが言う彼氏像とはかけ離れていて、ちょっと驚いてしまう。

 街の外の、安全で人が滅多に来ない所では手を繋いだりどこかを触ったりしているし、

ターナがダランディーガを触っても怒ってこない。そしてダランディーガはそういう時は

本当によく触ってくる。

 たまにアンバーの彼氏を見るが、アンバーの彼氏は同族のヒュームで、人前でもアンバー

にねだられれば手を繋ぐし、軽くだがキスだってする。

 その見た目の熱々ぶりは思わずターナがゴメンナサイ!と叫んで走って逃げたくらいだ。

 …まあ、ターナとダランディーガは1度物凄く濃厚なモノを公衆の面前でやった事があ

るけれども。

 ターナは何度思い出しても、勢いって凄いとしみじみと思うのだ。

 あの時のダランディーガの顔は、部屋でターナを心底求めている時の甘い顔だった。

「本当にターナの彼を見てみたいなぁ」

「機会があればまた今度ね」

 アンバーはターナの言葉にうなずき、そっとターナの背後に周り、うなじを見た。

 そこで、アンバーは思う。

(絶対、居るのは居るんだよなぁ…。私に嘘をついているんじゃないって、これを見たら

わかるんだけどさぁ…。ここまでするか、普通…。アイツだって驚いていたのよねぇ…。

俺はしていねぇとか言っていたけどさ、やっぱり普通はしないよねぇ…)

 ターナはこれに気が付いているのだろうかと思いながら、アンバーはいつも首を傾げる。

「あ、髪伸びてきたよねぇ。また切ってよ」

 ターナはそう言って背後のアンバーに声を掛け、伸びてきた銀色の後ろ髪を無造作にがし

がしとかく。

「ん、まだもうちょっと伸ばしていた方がいいんじゃないかなぁ」

「どうして?」

「今くらいの長さが似合っているからね。私はこれ位の髪が好きだなぁ」

 お茶を濁すようにアンバーがターナに向かって笑った。

「そう?だったらもうちょっと置いておこうかな」

「そうしなよ。今くらいが1番いいよ」

 嬉しそうに笑うターナのうなじを眺めて、アンバーが小さく唸る。

「…で、ターナの彼氏はうなじが好きなの?」

「どうだろうねぇ、わかんない」

(これだけの事をされてもわからないとは…。よっぽど激しいのか、コイツのオトコは)

 アンバーは1つため息をつきながら、ターナのうなじについた、まだ淡く残っている花び

らのようなキスマークをツンツンツン、と1つ残らずつついた。

 ひゃひゃひゃとターナがくすぐったそうに肩をすくめて笑う。

「もうちょっと長くなったら切ってあげるからね」

 アンバーはそう言いながら、毎度毎度ターナが街に帰る度に付けてくるその“印”をつけ

る男の事を考えた。昼間でも3時間もあれば、確実に新しい印を付けて帰ってくる。

 夜だったら言わずもがな。

 以前に種族装備なんて人前では恥ずかしくて着られないとターナはアンバーに言っていた

が、多分このうなじだけではなくて他にも男の足跡を付けられるのだろう。

(男除けとしては、くっつくよりも効果的なのは効果的よねぇ…。何しろ本人からは見え

ないしさぁ…。でもこれはねぇ…)

「うん、またお願い!奴がねぇ、誰が切ったのって気にしていたから、紹介したらきっと

喜ぶと思う」

 相変わらずターナは元気だ。…だから、きっと彼女は自分に付けられたその印を知らな

いのだろう。

「…本当に会ってみたいわ…」

「うん、あたしもアンバーにだったら見せたいな。また空いている時間を聞いてみるねぇ」

 何も知らないターナは背後にいるアンバーに向かって無邪気に笑う。

 その様子にアンバーもターナに笑いかけた。

「ラキムも今、アンバーの事を思ってくれているといいのにねぇ」

 そう言って、ターナはもう1度星空を見上げる。

「そうねぇ…。ターナの彼もターナの事を考えてくれているといいね」

「それだといいなぁ。…今頃、何しているのか知らないけどさ。外に出ているはずなんだ

よね」

「少なくとも浮気は無いと思うよ」

「だといいなぁ。アンバーが言うようなベタベタがないから、本当にいいのかなぁ、好かれ

ているのかなぁって思っちゃうんだぁ」

 アンバーの言葉にターナはあーあと声を上げて、地面に転がり、目を閉じる。

「人前でベタベタする事が全てじゃないよ。きっと恥ずかしがり屋なんだね」

 アンバーはターナと自分の掛け布を持ち、ターナの分をターナに掛けてから自分に掛けて

地面に転がった。

 するともう、ターナは寝息を立てている。

「ターナって本当に寝つきがいいんだから…」

 アンバーはそのターナの様子を見てまた1つため息をついたあと、自分も眠る為にゆっく

りと目を閉じた。

 








その意味を知らないほうが、きっと幸せ。






前のアンバーの名前を同鯖で見つけてしまったので変更。
そういや見た事あったよ、この名前。
でもこの名前もいそうだなぁ。
アンバーは見た事は無いけど、いそうな気はする。
まあ、うちのエルヴァーンの名前以外はみんな絶対に1人は居るか。
そしてアンバーさんの彼氏の名前も変更。
…気分的なものです。ごめんなさい。
2007/07/06










































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